・事情
本件は事件終了まで実に5年を費やした遺産分割事件です。
被相続人Aには相続人として、依頼者Xの他に、Y1,Y2、後妻Y3とその子Y4が存在し、
遺産として預貯金の他収益ビル及び自宅2棟がありました。
依頼者Xは長男Y1からごくわずかな遺産を渡すという遺産分割協議書にサインを求められ、不満に思い弊事務所に相談に来られました。
・経過と結論
弁護士は、遺産を調査した上で遺産分割調停を申し立てしたところ、調停期日にてY1が実は被相続人は遺言書を残していたとして、遺言検認を得ることができました。
その遺言が本件を長期化させることになりました。
遺言書には
①預貯金は各自の名義分は各自が取得すること
②その他の預貯金はY4が取得すること
③収益不動産の1階はY1、2階はY2、3階はY3が取得すること
④自宅2棟の建物の敷地については手書きの分割図にて取得者Y1~Y4と絵が同封されていました。
・今回の解決事例のポイント
本件では、大きく3つの問題がありました。
1 収益物件について区分登記がされていない1個の建物をどうやって遺言通りに分割するかという問題。
→これについては建物評価を算出した上で、床面積により案分するという評価方法をとりました。
2 収益ビルの土地については遺言が無かった点。
→やむを得ず法定相続分で分割するという手段をとりました。
このため、土地は法定相続分、その地上建物については遺言により、床面積で案分持分という非常に複雑な分割方法となりました。
しかしそれだけではなく、
3 自宅建物の敷地について、手書きの絵で取得者が遺言で示されているだけの分をどうやって、分割する手段を講じるかが最大の問題でした。
→土地家屋調査士と協力し、まず現地調査をして、遺言の手書き図面を測量図面に投影することを試みました。幸い、手書き図面は意外と正確に記載されており、折点を参照すれば遺言を図面に反映することができました。
土地についてはこの図面を測量図に反映させて遺言とおりに分割することにしました。
建物については遺言が無いので、法定相続分にて分割することとなりました。
そして、収益ビルについては売却して売買代金を上記持分で分割し、自宅についてはY4が購入して、その売買代金を分割するという分割方法をとりました。収益ビルの利益については借入金の返済に充てることを全相続人から合意を得て、その返済を行いました。
このように、本件では多数の論点があり、困難な事件でありましたが、相続人及び各種専門家(土地家屋調査士や司法書士等)のご協力をいただき、5年の歳月を得て何とか解決にたどり着くことができました。
解決に当たり、被相続人の遺言の意思を最大限くみ取れたのが弁護士冥利に尽きる点ですね。
依頼者様には、大変お喜びになっていただきました。この5年の間に、その他の事件もご依頼いただき解決させていただくことができ、強固な信頼関係を築くことができました。この点でも、弁護士として自信につながる事件でした。
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