・事情
相談者は、夫が亡くなり、相談に来られました。夫婦には子がなく、配偶者である相談者と、夫(=被相続人)の兄弟が相続人となる事案でした。
遺産としては、預貯金のみということでしたので、相続人の間で話がまとまれば、手続は短時間で終えることができると思われます。しかしながら、相談者は、夫の兄弟である他の相続人と接点がなく、住所等も不明であるため、交渉自体に支障がありました。高齢でもあり、ご自分での交渉は難しいと感じられ、専門家である弁護士に依頼をされました。
本件を整理しますと・・・・
・相続人らが疎遠であり、居所も不明。
・遺産は預貯金のみ(相続手続には、相続人全員の署名・押印が必要)
依頼を受けた弁護士は、まず、相続人調査 を行い、法定相続人の確定及び居所の調査を行いました。すると、相談者も知らなかった被相続人の半血の兄弟がいたことがわかり、その代襲相続人が存することが判明しました。
よって、相続人は下記の通りとなりました。
当方の相談者= X (被相続人Aの配偶者、妻)
被相続人(お亡くなりになった方)= A
他の相続人=Y1(Aの兄弟)、 Y2(Aの兄弟)、 Y3(Aの半血の兄弟の子、代襲相続人)
相続人は、X、Y1、Y2、Y3の4人です。
・経過と結論
相続人判明後、弁護士がY1、Y2、Y3と交渉を重ねましたが、Y1、Y2とも、Aと疎遠であったため、「関わりたくない」の一点張りで、話を聞くことさえ嫌がる様子でした。Y3については、Aの存在すら知らなかったということもあり、交渉の場に立っていただけませんでした。
このままでは、事件解決は難しいと判断し、弁護士が遺産分割調停を申し立てしました。調停は、当然ながら、相手方(Y1,Y2,Y3)欠席のため、不成立に終わりました。
すると、遺産分割審判に移行しました。審判において、弁護士が、以下の2点を丹念に主張しました。
1、相手方らが遺産取得の意思がないこと
2、これまでの交渉の経緯
その結果、審判では、当方の依頼者Xが遺産を全額取得するとの審判が下されました。
↓
・今回の解決事例のポイント
相続問題では、遺産分割をしようにも誰が相続人であるかわからないとか、全然あったことがない人と話をするのは嫌だという意向の相談者がいらっしゃいます。本件のように、配偶者の兄弟あるいはその子というような関係は希薄で、利益が対立する立場での話し合いは疲れるものです。そのような場合は、弁護士に依頼して、言いにくい相続分の主張を代弁してもらうべきです。
また、相続人は戸籍調査をしてみないと確定できません。あまり目にする機会が少ない戸籍を読み解き、相続人を調査することは大変ですが、本件のように、思いがけない相続人がいるもあります。ご自分での調査が難しいと感じられる場合は、専門家に相談されることをお勧めします。
本件においては、交渉、調停と、相手方にも主張の場が与えられていたにもかかわらず、消極的な態度に終始したために、相手方らは遺産を取得できませんでした。当方は、審判において、相手方らの対応やこれまでの経過を、詳細に主張することで、相続分以上の遺産全額を取得することができました。
相続は身近でありながら、人間関係の問題も含んでいることがあり、お悩みになる方も多いです。現在、問題になっている方はもちろん、これから相続を考えようという方も、相続になった場合の危険性を知っておく意味で、専門家に一度ご相談されることをお勧めします。
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