・事情
相談者(Xとします)には、5名のお子様(A、B、C、D、Eとします)がおり、このうちA、B、C、Dは娘で、Eが長男でした。また、Xさんは韓国籍でしたが、お子様たちはみなさん日本国籍に帰化していました。
Xさんは、マンションや土地を所有していたのですが、歳を重ねてきたため相続のことを想うようになりました。そこで、相続でもめ事が生じないように、自分の生前中に、長男であるEに自分の財産を確実に承継させられる手段を講じておきたいと考えました。
そのためXさんは、自分の希望通りに行く方法が無いかを相談しに、当事務所にお越しになりました。
・経過と結論
Xさんの希望は、E以外の子供には、事前に遺留分を放棄させ、Eに遺言ですべての財産を承継させて家を継がせるということです。
しかしここで、Xさんは韓国籍であるため、相続の準拠法が韓国法になってしまうという問題(通則法36条)がありました。そして韓国法では、遺留分の事前放棄を認める条項は存在せず、そのままではXさんの希望を叶えることができません。
そこで更なる検討重ねると、韓国法では遺言において、相続の準拠法を指定できることが認められており(韓国私法49条2項)、韓国法では遺留分の持ち戻し免除規定がないこと(韓国法1008条)、を加味した遺言書を作成することにしました。すなわち、
①Xさんに遺言の中で相続に関する準拠法を日本法に指定すること
②Xさんの財産をEに遺贈した上で、持ち戻し義務免除条項を入れること
に加えて、
③A、B、C、Dには遺留分減殺をしない代わりにEがXさんを終生介護すること
④祭祀承継者もEとすること(民法897条)
とする遺言を作成いたしました。
・今回の解決事例のポイント
本件では、相続と準拠法がテーマとなった事案です。
大阪市人口の在日外国人の占める割合は4.6%になり、その内大韓民国及び中国の国籍者は約9割に上ります。これほど多くの方がいらっしゃるにも関わらず、フォローできる法律家は残念ながら多くはありません。
在日外国人の方の中には、数世代前に日本に居住し始め、日本人と全く変わりなく生活している方が多数いらっしゃいます。この方達は全く本国法を知らず、自分達の生活は日本法で処理されると信じておられる方がほとんどです。
相続に関して言えば、そのような誤解は相続人間の紛争を生むだけであり、被相続人の本意と異なる相続処理になりかねません。
ですので、相続のことやご家族のこと(離婚や養子縁組など)でお悩みの方は、一度ご相談されることをお勧めいたします。
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