• 相続問題

・事情

本件の沿革は江戸時代に遡ります。古くからの地主YとYから土地を購入した依頼者の先祖Xが土地を途中で交換したものの登記名義は変更せずにそのままにしておいたところ、X側にて相続が発生しました。土地を承継した相続人が土地を売買したり、Yも一部土地を売買したこともあり、事案はさらに複雑になりました。結局、Xの土地上にはY名義の土地が一部介入していますが、Yは死亡し当時の事情を知るものはほとんどいなくなっっていましました。Xの子孫である依頼者は途方に暮れて当方に依頼されました。

問題は、以下の3点です。

 ①土地の交換を口約束で行っている。(契約書等がない。)

 ②土地の交換を行ったXとYがすでに亡くなっている。

 ③交換後のXとYの土地は、相続や売買で、所有者が複数になり、当時の事情を把握している者がいない。

 当方依頼者X1はXの子孫であり、自分の代で、3代続いたこの問題に決着をつけたいという強い気持ちから、専門家である弁護士に依頼されました。

・経過と結論

弁護士介入後、Y相続人らと交渉するもY相続人の一部が過去の事情を全く知らないために、登記名義をX1に変更することを拒否し交渉は頓挫してしまいました。

 小職はやむを得ず調停を申し立てしました。調停においては、過去の事実について資料が消失しており困難を極めたが、過去測量した調査士を呼ぶなどして可能な限り立証に努め、結局Yの相続人全員がX1土地内のY名義の土地の名義をX1に移転することに合意しました。X1はY相続人に解決金だけを支払うことで登記名義の取得ができました。

・今回の解決事例のポイント

 隣地の当事者同士が、口約束で土地を交換したり、一部譲渡したりする・・・。現在ではまれですが、大昔には普通に行われていたことです。

 しかし、契約書もないまま、登記名義変更もせず、当事者が亡くなり、相続が発生すると、相続人は過去の口約束など全く知らないと主張するのも無理もないことです。

 本件ではX1土地が明確に擁壁などでY土地と区画されており、X1土地上のY名義の土地は時効取得も成り立ちうる状態でした。調停では過去の事実の立証の困難性が見込まれたので、X1がY名義の土地を時効取得したととする主張をして、なんとかY相続人らに納得してもらい、勝ち得た調停でした。