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婚外子の相続差別に関する最高裁違憲決定について

 

弁護士 黒田充宏

 

※これは平成25年10月ごろに執筆したものです。ご留意ください。

 

1.はじめに

(1)とりあげる理由

   ここ3回の「あい通信」(注:当事務所が発行しています事務所報のことです。)では、相続に関する連載をさせていただきました。なぜ相続を取り上げたかと言えば、ここ直近で、「相続税の改正」、「国民意識の変化」、「判例変更の可能性」があるためです。そして、今回「判例の変更」が実際に行われました。

   そこで、今回の判例変更により、相続に対してどのような影響があるのかについて検討していきます。

 

(2)判例変更の内容

   まず、問題となったのは民法900条4項ただし書き前段です。その内容は、

 

非嫡出子(夫婦の関係にない男女の間に生まれた子供。いわゆる婚外子)の相続分は、嫡出子(夫婦の間に生まれた子供)の半分とする

 

というものです。

 

   この規定に対しては、以前から不平等である(憲法14条1項違反)等の主張に基づき、裁判がなされていました。そして、この主張に対して裁判所は、民法は法律婚主義を採用しており、法定相続分は配偶者とその子どもを優遇するが、民法900条4項ただし書き前段は(むしろ)非嫡出子にも一定の法定相続分を認めてその保護を図った規定であり、憲法14条1項に反するものではない、としてきました。

   この判断の基底には、「家制度」の名残としての法制度の存在や国民意識、社会状況、この規定の立法に影響を与えた諸外国の法制度の存在などがあると思われます。そして、今回の裁判所の判断としては、こうした要素に変化があると指摘して(例えば、晩婚化・非婚化・少子化が進んでいること、諸外国でも非嫡出子と嫡出子間の相続に関する差別を廃止していること、日本でも住民票や戸籍の記載が変更されていることなど)、平成13年7月当時には、この規定はもはや憲法14条1項に違反しているとしました。

 

 2.相続への影響

(1)過去の相続について

   では、この判例変更によって、相続にどのような影響があるでしょうか。

   まず、過去の相続(この判例がでる以前の相続)に対しては、影響がないと断言しています。

   当然のことだと思われる方も多いかと思いますが、理論・理屈次第では、過去の相続にも影響があるということができたのです(逆に考えれば、その可能性もあるために、裁判所は「影響がない」と明言したとも言えます。)。ですから、相続の蒸し返しが生じることはありません。

(2)これからの相続について

   まだ国会で、この規定の改正はなされていませんが、今後は、

 

「非嫡出子と嫡出子の相続分は平等である」

 

  という前提で相続を考えていくべきです。最高裁で違憲と判断された以上、近々法改正がなされることは間違いないでしょう。

   また、相続が生じることになった場合は、相続人調査をしっかりと行うべきです。金融機関などが相続人の状況をチェックするとは思いますが、相続人達がきちんと把握していないと、思いの寄らないことを言われてしまう可能性もあります。ですから、銀行などから言われるままに書類だけ集めれば良いと考えるのではなく、ご自身でも戸籍などを読み解いておくべきです。

   遺言書を書こうと考えておられる方も、同様です。法定相続分が変更される以上、遺留分の割合も変更になります。ですから、遺留分のことを今まで以上に考えた遺言書にしておかなくてはならないでしょう(既に書いた方は見直しすべきです。)。

 

 3.まとめ   

   最高裁で違憲という判断がなされたというのは、法律関係者の中ではとても大きな出来事です(違憲という判断は、驚くほど少ないのです。)。違憲という判断が出されたばかりであって、まだまだ実感のない方も多いかと思います。少しでも相続のことを考えるようになれば、一度専門家にご相談ください。また、遺言書を既に書かれている方も、一度見直しされることをおすすめいたします。

 

 

 

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